近衛文麿に組閣命令 (辞退) 1936/03/04
〜 あああ 〜
あああ
taro's トーク
ああああああ
「体の具合が悪いとは何事どす。(四十四歳の)あんたが健康のことをいうんなら、八十八歳のこちはどないなりますのや。
あんたが受ける受けないにかかわらずこちには奏薦の権限がおますのや。
こちは自分の信念によって奉答するよう決心してますさかい、このさい多少のことは辛抱して受けるのが当然やおまへんか!」
西園寺は京都弁丸出しで近衛を督励したが、椅子の上の近衛は長身を二つ折りにして顔面を蒼白にしてうつむいているだけであった。
眺めている原田も胸が痛い想いであった。
近衛首班は永い間唯一の公卿政治家として、軍部や政党と戦って来た老公の、最大にして多年描いていた夢であった。
しかし、近衛はそれを受けようとしない。
そこに示されているのは最愛の恋人に裏切られたような、貴族の老人性ヒステリーのようでもあった。
天皇は、
「卿に内閣組織を命ず」
と大命降下を行った後、
「この際是非とも時局収拾の為に起ってもらいたい」
とつけ加えた。
「こちがあれほどいうたのに、わからんのか」
と苦り切った調子で言った。
豊田穣 「西園寺公望(下)」
P.288この本を入手
※ 「クリック20世紀」では、引用部分を除いて、固有名詞などの表記を極力統一するよう努めています。
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