大東亜省設置を閣議決定
1942/09/01
占領地の行政を担当する大東亜省を新設。 これに反対する東郷外相が無念の辞任。
    
1938/11/03   近衛声明A (東亜新秩序建設)
1940/03/30   汪兆銘(南京)政府成立
1941/12/25   香港のイギリス軍降伏
1942/01/02   日本軍、マニラ占領
1942/02/15   シンガポール攻略
1942/03/08   日本軍、ラングーン占領
1942/03/09   ジャワ島の蘭印軍降伏
1942/05/07   コレヒドール島(フィリピン)のアメリカ軍降伏
1942/09/01   大東亜省設置を閣議決定 (東郷外相辞任)
1943/08/01   バー・モ政権、ビルマ独立宣言 (米英に宣戦布告)
1943/10/14   フィリピン共和国独立宣言 (大統領:ラウレル)
1943/10/21   チャンドラ・ボース、自由インド仮政府樹立 (シンガポール)
1943/11/05   大東亜会議開催 (11/06 共同声明発表)
〜 あああ 〜
あああ
taro's トーク ああああああ
引用占領地行政の責任者は軍司令部が兼務するとなっているが、 その実態は歴史上で誇れるものではなく、占領地を補給地と考え、戦勝国の傲慢さで日本化を要求した。 現地の人びとに日章旗への礼拝を要求し、神社への参拝を求め、真影への敬礼を強要する・・・・・・。 そういう占領地行政が各国での軍司令官の実態だった。
「主権を尊重して経済協力の基礎のうえで善隣外交を行なわなければだめだ」
東郷は言い、武力統治一本槍でなく、文官統治へと変えていくべきだと主張した。 閣議に大東亜省設置がもちだされたとき、東條の意を受けて東郷と論争したのは、 企画院総裁の鈴木貞一であり、情報局総裁の谷正之だった。 彼らには東條の根回しができていたからだった。
だが東郷は猛然と反論した。
「外交が二元化されるではないか」
この執拗な反論に、東條がこんどは答えた。
「従来の外務省の外交だけでは、東亜の諸国はその他の諸外国なみだと不満に思い、 日本にたいし不信の念を抱くことになろう。 これらの国々の自尊心を傷つけては独立尊重の趣旨に反する」
東條はきわめて都合のいい論で対抗し、そして最後に本音を吐いた。
「大東亜諸国は日本の身内として他の諸外国とは取り扱いが異なる」
だが東郷もひるまず、外交二元化の不利をなんどもくり返した。 外交関係があるのはドイツ、イタリア、ソ連、バチカン、スイスなどわずかの国々だ。 このうえ東亜各国との外交交渉から手をひいてしまえば、外務省としても手足をもぎとられたと同然だという反撥が彼にはあった。 それだけに東郷も必死だったのだ。 ふたりの論争は意地のはりあいとさえなった。
【中略】
閣議後もふたりで話し合ったが、結局結論はでなかった。 かつての近衛東條のような険悪な雰囲気となり、東郷は辞意をほのめかした。 閣内不一致で東條内閣総辞職につながる恐れに、東條鈴木貞一を呼んで命じた。
木戸賀屋を説得して、とにかく大東亜省の設置を認めさせろ」
【中略】
八月三十一日、鈴木賀屋木戸に会い、大東亜省設置を説き、消極的な賛成を得た。 その報告を受けた東條は、きわめて手のこんだ手段で東郷追いだしをはかった。 九月一日の午前、東條東郷に通知せず、閣議を開いた。 そこで閣僚に大東亜省の設置の諒解を求め、全員が賛意を示すと、 「どんなことがあっても結束を乱さないように・・・・・・」と確約をとった。 午後、東條東郷を官邸に呼んだ。 東郷を待ち受けながら、すでに東條は興奮を押さえきれずに言いつづけた。
「国務大臣たる者は犠牲を忍んでこそ、そこに発展がある。 第一線で将兵は大君のために名誉の戦死をしている。 大戦下になればこそ、このくらいの心がけがなければ国務大臣たる資格はない」
自らはあらゆる政治的責任から免責された地位にいるという認識、 そして自らこそ聖慮の具現者であるとの自負だけが彼に宿っていた。
ふたりの会話は初めからかみあわなかった。
「大東亜省設置案は断固実施する予定だ。 この案に不賛成ならば、午後四時までに辞表を書いていただきたい」
東郷が出て行くと、東條は宮中に木戸幸一をたずねた。 外相が辞職しないときは閣内不統一で総辞職のほかはない、と言った。 木戸は驚き慰留した。この期に首相がかわるのは、内外に与える影響は大きいというのである。天皇も驚いた。
「内外の情勢、戦争の現段階、ことにアメリカの反抗気勢の相当現われ来れる今日、 内閣の総辞職は絶対に避けたい」
天皇のことばは木戸をつうじて、たちまちのうちに政策集団内部に広まった。 そうなると東郷も打つ手がなく、辞表を書かざるを得なくなった。
きわめて狡猾な東條の戦術だった。 この期に首相更迭ができるわけはないと知っている。 しかも天皇に信頼されていると自負している。 それを読みとって木戸に恫喝をかけた。思惑どおり成功したのである。
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