ゲオルギー・アポロノビッチ・ガポン 1870 − 1906
神父、労働運動指導者 / ロシア
エピソード 1調査中。
引用ガポン神父というのは、どの国の革命期にもあらわれる魅力的な煽動者である。
かれは南ロシアのポルタヴァの農村でうまれ、僧侶を志して神学校に入ったが、在学中、トルストイの思想の影響をうけた。
かれは卒業後、司祭になり、ペテルブルグに出て伝道生活をするうち、工場労働者の暮らしむきの悲惨さに同情し、
「ペテルブルグ工場労働者クラブ」
という団体をつくった。 【中略】 「血の日曜日」の二年前である。
その結成についての資金は、奇怪にも憲兵大尉のズバートフを通じて政府の機密費から出たといわれるが、
真相がどうであったか、いまでもよくわからない。
かれは労働者に圧倒的な人気を得た。
かれほどに労働者から尊敬され、その心を魅了した人物は、ロシア革命史を通じていなかったかもしれない。
その魅力の源泉は、かれの聖者をおもわせるような風貌と、その蠱惑的でさえある煽動演説のうまさによるものであろう。
「どうも怪僧だ」
と、あとで宇都宮太郎に漏らしたところをみても、まともな人物とはおもっていなかったらしい。
大衆を蠱惑するような教祖的人物というのは、多分に催眠術師的であり、
自分自身に対しても華麗な自己催眠をほどこしうる妖しさをもっているのであろう。
司馬遼太郎 「坂の上の雲(6)」
P.224この本を入手
※ 「クリック20世紀」では、引用部分を除いて、固有名詞などの表記を極力統一するよう努めています。
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