武藤 章 1892 − 1948
[ むとう・あきら ]
陸軍省軍務局長、第14方面軍参謀長、陸軍中将、A級戦犯
エピソード 1調査中。
語録
二度と生きて会える日はあるまい。東条は満身創痍でたおれるだろうが、しかし最後にこの戦争が敗勢濃くなったとき、
収拾をするのは結局陸軍だろうと思う。それが運命だ ―
語録
千代子の涙をたたえた大きな目、「二十五年間幸福に暮らさして戴きました」と云う初子の言葉、
「一生涯よく国家にお尽し下さいましたことについて、私からもお礼を申上げます」と云う尾野の母上の伝言・・・・・・。
戦争に無一物になって、明日の生活にも困るこれらの憐れな人々を残して、私は死なねばならぬ。
引用昼食の時間が来た。
閣下たちは三々五々、歩いて来た。
だがその日には、いつもと違った一人の新顔が見えた。
その人は、米軍のジャングル戦用迷彩服を着ており、それが奇妙によく似合った。
彼は、あたかも収容所も鉄柵も軽蔑するかの如く傲然と見下し、それらの一切を無視するかの如く、
堂々と歩いてくる。
その態度は、終戦前の帝国軍人のそれと、寸分違わなかった。
丸い眼鏡、丸刈りの頭、ぐっとひいた顎、ちょっと突き出た、つっかかるような口許、
体中にみなぎる一種の緊張感
―「彼だな」私はすぐに気づいた。
それは第十四方面軍参謀長武藤章中将その人であった。
そして彼の姿と同時に、反射的に四つの言葉がよみがえった。「統帥権、臨時軍事費、軍の実力者、軍の名誉(日本の名誉ではない)」。
軍部ファシズムをその実施面で支えたものは何かと問われれば、私はこの四つをあげる。
そして私にとってこの四つを一身に具えた体現者は彼であった。
※ 「クリック20世紀」では、引用部分を除いて、固有名詞などの表記を極力統一するよう努めています。
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