本書のなかでは、わたしも、随処にヒトラーなりムッソリーニなりの悪魔的な行動をあばいてゆくことになろう。 しかしその際、これら独裁者の非人間的な性格を憎悪し、嫌悪するあまり、 彼らの思想や政治技術や戦略についての冷静な観察をおろそかにしまいと思うのだ。 とりわけヒトラーのような人物の場合には、そのおそるべき非人間的性格が卓越した政治技術や戦略と同居していたのだから、 こういう配慮はとくにたいせつだろう。　（はじめに）